マリンアクアリウムを始めるにあたって、水槽を立ち上げてから生体を入れるまでは「数週間~1カ月ほど」はフィルターを回した後に導入するのが望ましいと言われます。
これは、淡水水槽でも同じなんですが、立ち上げてすぐの水槽には有害物質を無害化してくれる、有益な濾過バクテリア(微生物)が存在しないので、そのバクテリアが繁殖して定着するまで待つという事なんですね。
ただ、実際には水質がどうなっているかなんて肉眼で見ても「透明だなぁ~」としか分からないので、どのくらい待てばいいか分からないですよね(汗
そこで、魚を飼育できる状態になっているかを確かめる方法として「パイロットフィッシュ(テストフィッシュとも呼びます)」を導入するという方法があります。
以下では、マリンアクアリウム水槽を立ち上げてから”生体を飼育できる状態”になっているかを確かめるパイロットフィッシュについてと、お勧めの魚種についてご説明していきたいと思います。
パイロットフィッシュ(テストフィッシュ)って何!?
「パイロット」って単語は、普通は飛行機の操縦者を指す言葉ですよね。
当然、マリンアクアリウムでは意味合いは異なり、水槽立ち上げ後に魚やエビなどの生体が生活できる環境なのかをチェックする目的で導入魚をパイロットフィッシュと呼びます。
では、なぜパイロットという単語た使われているのかと言うと、開発されたばかりの戦闘機は”試し飛行”、つまりテストパイロットにて実用性を試されたのちに実用化するんですね。
また、パイロットには「正しい方向へ導く」という意味合いがあります。
マリンアクアリウムでの意味合いは、実際に魚を導入し、生活できる環境なのかをチェックし、正しい方向へ水質が出来上がっていることを実証するということになります。
この過程が、まさにテストパイロットに似ているため、「パイロット」という言葉が由来し、使用されているんだとか。。。
パイロットフィッシュの目的
なぜパイロットフィッシュなる魚を導入するのかと言うと、一番の目的は水質の安全性を確かめるためです。
通常、バクテリアが繁殖している水槽では、生体やゴミから発生する有害なアンモニアや亜硝酸を分解して、それほど害のない物質に変えるというサイクルが出来上がっており、生体が安心して生活できるようになるんですね。
しかし、立ち上げ当初は水槽内にバクテリアは存在しなく、これが増えるのには時間がかかるのと、バクテリアの餌が必要になります。
よく、「水槽を立ち上げてからすぐに生体を入れるのはオススメしない」とか、「立ち上げ後、フィルターを回して数週間おく」っていわれるの聞いたり、本で見たことはありませんか?
これらの理由は、まさに上記で書いたように、立ち上げ当初の水槽にはバクテリアが全くいないが故、水質が不安定なので、生体によっては飼育自体が危険なこともあるからなんですね。
バクテリアの生物濾過サイクルは、生体(海水魚やエビ・餌の食べ残し)から発生するアンモニア(超有害)を亜硝酸(有害)に変え、亜硝酸(ほぼ無害)を硝酸塩に変えるという役割を果たします。
硝酸塩は、、、まあ有害な物質ではありますが、アンモニアや亜硝酸に比べると断然無害なので、「ほぼ無害」と表記されていることも多いです。
※亜硝酸は換水によって濃度を下げるのが普通です。
バクテリアが水槽内に存在しないと、発生したアンモニアを分解する微生物がいないわけですから、その濃度は上がる一方で、とても生体が生活していけない状況になってしまうんですね。
ただし、逆にこのアンモニアはバクテリアにとってはご馳走(餌)なので、バクテリア増殖には欠かせない物質でもあるんです。
何も生体を入れなければアンモニアは発生しないわけですから、フィルターを回していてもそれほどバクテリアは繁殖しない。。。
でも立ち上げ当初はバクテリアがいないので、生体から発生するアンモニア濃度がどんどん上がっていく。。。
難しい問題なんですよね~(汗
そこで!
「水質の変化に強い魚」をパイロットフィッシュとして導入して、海水魚が問題なく飼育できるかを確かめるという方法と取るんですね
つまり、未開拓地が安全性かどうか確かめるために先遣させる魚ということです。
安全か確認されたのち、メインフィッシュを導入するといった感じですね。
パイロットフィッシュに適した海水魚とは
古くからマリンアクアリウムで、パイロットフィッシュとして導入されているのが「デバスズメダイ」です。
パイロットフィッシュに適した条件を挙げるとしたら、、、
- とにかく丈夫な魚であること(最重要)
- 価格が安価であること
- 性格が温和で混泳向きであること
- 体色が美しく観賞価値が高いの種が望ましい
などがあります。
デバスズメダイは、この上記の条件をすべて満たした海水魚なんですね。
デバスズメダイは、とにかく丈夫な海水魚で有名で水質の変化にも強いことで知られています。
パイロットフィッシュとして、水質が不安定な所に泳がせるのですから、水質に敏感な種を入れるわけにはいきませんよね。。。
価格で言うとデバスズメダイは、1匹200円前後と海水魚の中ではダントツに安価です。
「もしもの時・・・」の為に、パイロットフィッシュには安価な種類が選ばれるのが普通です。
※命あるものなので、決して粗末にしていいという訳ではないというのを肝に銘じておきましょう!
基本的には、「丈夫」そして「安価」、この2点があればパイロットフィッシュとして導入できます。
ただ、水質の安全か確認できたとして、「そのパイロットフィッシュはどうするの!?」って思う方も多いはずです。
まさか安全が確認出来たら捨てるなんてことは絶対してはいけませんから、通常はそのまま飼育する方がほとんどでしょう。
近くに引き取ってもらえるショップがある場合は、引き取りをお願いするのも手だといえます。
上記で、パイロットフィッシュの条件に「性格が温和で混泳向き」「美しい」を入れたのは、水質確認後にそのまま飼育する場合の方がほとんどだと思うからです。
混泳向きの海水魚であれば、他の海水魚を導入しても問題ありませんし、なにしろ「観賞魚」というくらいですから、そのまま飼育をするの出れば美しいに越したことはありませんよね!
これらの理由から、パイロットフィッシュに適した海水魚は「デバスズメダイ」が絶対にオススメです。
「パイロットフィッシュ?何それ・・・?」ってくらい綺麗な海水魚で、メイン魚としても人気がありますよ。
パイロットフィッシュを導入する時期と数
水槽を立ち上げてからフィルターを回して、少なくても1週間くらい経ってからパイロットフィッシュを入れるのが望ましいです。
すぐに投入する方もいますが、出来ればフィルターを回して水槽システムがしっかりと立ち上がってからの方がいいように思います。
パイロットフィッシュの数は、海水10ℓに対して1匹が望ましいとされます。
60cmの規格水槽の水量が約60ℓなので、6匹くらい導入するのが良いという事ですね。
※ℓの計算式:幅×奥行×高さ÷1000=アナタの水槽のℓ数!
さいごに
丈夫な海水魚と言うのは、水質に強く、どれもパイロットフィッシュとなり得るほど強靭なものも多く存在します。
なので、特にパイロットフィッシュで水質を確認しなくても大丈夫、、、という事も、まあ多くあるのも事実です。
ただ、マリンアクアリウムにハマって今後、飼育の難しい生体、超高価な生体を飼育するときは、このパイロットフィッシュで安全性を確かめる手段はかなり重要になってきます。
超高価な生体を、導入段階で失敗なんてしてしまったら目も当てられませんからね・・・(泣
なので、安全性を確かめる方法の一つとして、パイロットフィッシュの導入は有効な手段だということを覚えておくといいですね!