今や人気のある熱帯魚は東南アジアなどを中心に、盛んに養殖されています。
その養殖された個体が大量に日本に持ち込まれるんですね。
そのお陰で供給がグーンと増え、ひと昔前までは数万円とかした高級魚も、今では数千、数百円という値段で出回るようになりました。
ただ、大量に養殖される個体は、個体同士が擦れあったり、ストレスがかかって弱っていたり、病原菌を持ち込んだりと様々な問題もあります。
そんな弱った魚の体力を回復させる効率の良い方法として「塩浴」があります。
ここでは、塩浴の効果や注意点についてご説明していきます。
塩浴の効果
食生活でも馴染みの深い塩ですが、アクアリウムでは古くから魚病役として用いられてきました。
今でも活用されており、初期症状では専用の魚病役がなくても、塩を少量入れて水温を高めるだけで病気が改善されることも多々あります。
では、どのような場合に塩を用いるかというと、
- 新しい熱帯魚を導入するとき
- ミネラルの補給
- 浸透圧の調整
※基本的に「塩浴」とは、0.5%の濃度(1リットルに対して塩5gの量)に合わせます。
これより高いと危険なので、どんなに高くても0.5%の濃度以下で行うといいでしょう。
使う塩は、市販の塩で全く問題ありません。
ただし、他の成分(アミノ酸など)が混ざった種類のものは使用しないように注意しましょう。
新しい熱帯魚を導入するとき
熱帯魚を購入してきたとき、魚がストレスや摩擦で弱っている場合に、塩を一つまみ入れておくだけで体力を回復させる効果があります。
塩には強い殺菌作用があるので、新しい魚を導入するときの塩浴は持ち込まれた細菌や寄生虫を除去する効果も期待できます。
新しい魚を導入して、何となく元気が無いように見えたら、塩浴をしてみるといいかもしれませんね。
塩浴の期間は、通常は魚が元気な姿を見せるまで同じ濃度で行うのが望ましいとされ、マメな換水も必要となります。
多い量の水換えで急激な水質の変化には気を付けるようにしましょう。
ミネラルの補給
塩は栄養補給やミネラル供給の目的で使用されることもあります。
特にディスカスの飼育では、古くから塩を用いてミネラル補給がされていて、定期的に塩を入れることを勧める専門店すらあるくらいです。
つまり、「水槽に足りないものを身近なもので補う」という目的で使用するということですね。
ミネラル、栄養補給で使用する場合は濃度を低めでいいと考えています。
それこそ、ほんの一つまみ程度でも十分な栄養を補うことが出来るので、少量だけ入れておくといいでしょう。
浸透圧の調整
浸透圧というのは、簡単に言うと「水は濃度の高い(濃い)所へ移動する」という原理です。
分かりやすく言うと、ナメクジに塩をかけると溶けると良く言いますが、あれは塩をかけることで体内の水分が濃度の高い塩へ吸い寄せられるからなんですね。
実際は溶けているわけではく、縮んでしまうんですね。
ナメクジは浸透圧の影響をモロに受ける生き物です。
では熱帯魚の場合ではどうかというと、魚は体内に微量の塩分濃度があるので、水中では常に浸透圧の影響を受けているんですね。
熱帯魚の体内塩分濃度は0.7%前後といわれ、淡水(塩分濃度0)では、熱帯魚が体内の塩分濃度を調整していかなくてはいけないのです。
魚は水に依存した生き物なので調節する機能はもちろん備わっていますので、普通は問題ありません。
しかし、病気や弱っている時は調節するのに、さらに体力を消耗してしまったり、超絶自体が上手くいかないことがあります。
そこで、塩を投入して体内と体外の塩分濃度が同じくらいになれば、負担を軽減させてあげることができるんですね。
これにより、体力回復の効果が見込めるという訳です。
塩を使うときの注意
水草との相性は最悪
塩を一つまみ入れると様々な効果が得られる塩ですが、もし塩を投入したいと考えている水槽に水草を育成している場合は、基本的に投入NGです。
水草の種類にもよりますが、塩分濃度が高くなるとほとんどの水草は枯れてしまいます。
その場合は、別で塩浴専用の水槽を用意するといいでしょう。
弱っているような熱帯魚がいれば、一旦べつに用意した塩浴水槽に移して、元気になったらまた元の水槽に戻すといった感じです。
ここでちょっと注意したいことがあるのですが、塩の濃度が高い水槽にいきなり投入するのは水質が急変するのと同じなので危険なんですね。
なので、別水槽に熱帯魚をいれてから徐々に濃度を上げていく、元気になったら換水して徐々に濃度を下げて元の水質に慣らしてから戻すようにしましょう。
バクテリア死滅の危険性
水槽の水質維持に必要不可欠な存在なのがバクテリアです。
バクテリアは時間の経過とともに徐々に増えてくるもので、魚にとって有害な物質を分解してくれるんですね。
そんな有益なバクテリアですが、塩分との相性が悪いといいます。
中には塩を投入するとバクテリアが死滅してしまうという人もいれば、死滅するのではなく一時的に活動が停止するだけという人もいます。
どちらにせよ、塩を入れることでバクテリアの働きに影響が出るのは確かなようなので、フィルター設備や濾過材に力を入れているような水槽では塩を投入する必要はない、しない方がいいといえます。
最後に一言
普段見慣れた塩ですが、実に素晴らしい効果をもたらしてくれるんですね。
病気にならないよう日頃から気を付けるのが一番ですが、万一の時は役に立つので、「病気かな?」「元気がないなぁ・・・」と思ったときは使用してみるといいでしょう。
そして、使う前提として「塩浴が出来る熱帯魚のみ」です。
種類によっては逆効果となることもあるので、必ずその熱帯魚が塩浴していいのかどうか調べてから行うようにしましょう。